2015年1月10日土曜日

リファレンスについて

リファレンス(reference)

リファレンスについての話です。

そのままの意味は「参考にするもの」的な意味ですが。アニメーションでいったらアニメートするために動きや演技の参考にする動画などを言います。

どこの学校でもそうだと思うのですが、アニメーションを教える学校は大体最初は基礎中の基礎ボールバウンス(弾むボール)から教えます。わたしの学校では作品提出時にかならずリファレンスも提出しなければいけませんでした。(しかも自分で撮影したものでないといけない) 

じゃあ今でも、ボールバウンスのリファレンスを毎回自分で撮影するか?というとそうでもありません。ボールバウンスはもう基礎を把握しているので、何も見ないでもそれなりに作れます。ただそれが特殊なボールという指定があればチラッとYouTubeで「こんな感じか」と言うのを確認するかもしれませんが。

じゃあ、なんでわざわざ私の学校で自分で撮影したリファレンスの提出を求められていたかというと、単純にリファレンスを撮るというのは大事であって、撮った方が撮らないよりも時間の短縮になることが多いので、そのプロセスを生徒に教えるためです。

ともあれ、現実に存在する物理や動き、人間の感情表現なんかを、自分でとったもの、YouTubeに落ちていたもの、映画からなどなど、色々な方面からリファレンスを集め自分がアニメートする際にに使います。

で、ただ単にリファレンスというと

ライブアクションリファレンス(live action reference) を指している場合がおおいです。

実写のリファレンスということですね。なのでアニメーターはしょっちゅうカメラを持ち出して自分が担当するシーンを自分で演技したりしてみます。

ただリファレンスに頼りすぎると、モーキャプでもいいみたいになってしまいますし、アニメーターがアニメーションをつける意味みたいなものもなくなってしまいます。

これについて私も昔悩んだことがあり(今でもさじ加減が難しいところですが)当時学生だった私は、何度か会ってお世話になっていたドリームワークスで長年キャラクターアニメーターをしている原島朋幸さんにプロの意見を聞いてみたいと思いメールしたことがありました。

そのやりとりを偶然、昔のメールをあさっていたら見つけたのですが、今読んでも「為になるなあ」と思ったので原島さんに許可をいただいてメールのやり取りを乗せることにしました。

それではこちらが私の質問です。


アニメーターにとってリファレンスは大切だと思いますが。
たとえば、歩いてるショットとか、普通のアクティングのショットとかは、普通にリファレンスを自分で撮るなり、友達と撮るなりできますよね。
でも、やっぱりアニメーションの世界には現実ではありえないこと、または自分じゃできないこと。たとえば、ほうきで空を飛ぶ魔法使いとか(というかそれを今学校でやっているのですが。) 
それこそHow To Train Your Dragonのドラゴンなんていないので、現実世界にいるものを参考にしてリファレンスにしますよね。
それとか現実に存在するけれど、自分自身ではできないもの、特定のスキルがないとできない動き。(バック転とか、自分はやったことのないスポーツとか、サーカスの人たちにしかできないようなこととか。)
そういうのをやるときって、たとえばストーリーにそってプランニングをして、この動きがほしい、この動きがほしいっていうのはわかっててもじぶんでそのリファレンスを取れないので。ユーチューブとかで私は動画を集めたりしたのと自分で撮ったものといろいろなのを参考にして、私はやっています。 
そうすると、やっぱりどうしても自分の頭に頼らないといけない、というか補わなければいけない(たとえば、サーカスの人のジャンプの動きを、友達ととった演技用のリファレンスとあわせてみる。)みたいな事があるんです。
でも、私はまだまだそこまでスキルのあるアニメーターではないので混乱してしまうときがあるんですね。 
原島さんは自分でそういうシーンをアニメートしなければいけないというような時に、どういうふうにアプローチしていますか?
あとリファレンスをどれくらい使いますか?(たとえば、すごく正確に?それとも、ポーズやアクティングのアイデアを得るために?)
今まであってきたアニメーターさんに話を聞いても皆さんスタイルとかアプローチの仕方がぜんぜん違ったりするし。
プロとして働いてる原島さんのショットへのアプローチの仕方とか参考程度でよろしいので教えてもらえたらいいなと思ってメールをしました。


そして、こちらが原島さんからの返答です。


こんにちは。頑張っているようですね。
まず、ショットへのアプローチは人それぞれ違うのは当然ですし、ショットによっても違うと思います。
参考になるか分かりませんが、私のライブアクション・リファレンスに対する考えなどを書いてみます(当然ながら、みゆきさんや他の人にとってこれが正しいかはわかりません)。

ライブアクション・リファレンス(以下L.A.R)は非常にパワフルなツールですが、とても危険なツールでもあると思います。あまり頼りすぎるとAnimationの良さを殺してしまうし、L.A.R.なしではAnimationさえ出来なくなってしまいます。Animation
Mentorの卒業生は非常にL.A.R.に頼る傾向があります(良い意味でも悪い意味でも)。

私もL.A.R.は良く使いますが、その前に大事な事は、演技をしてそこからアニメーションをするのではなく、ショットで何が起こっているのか理解してActingを自分で決めて、必要があればビデオを取ります。Actingするだけでビデオが必要ない場合は取りません。私自身は演技は上手くないのでL.A.R.の中で見るものはウエイトや無意識な仕草などです。ポーズも参考にはしますが、通常はそのままでは使わないです。自分で演技をする場合は出来るだけショットと同じ環境、プロップなどを使います。特にプロップはウエイトの参考になります。
大切なのは、ショットを理解して適切なActing choiceが先でL.A.R.はそれを保管するものというスタンスです。
ドラゴンや実際に自分で演技出来ない場合も、ショットで何が求められていて、ショットのビートなど(ダイアログ等によって決まってくる)を把握した後に使えそうなリファレンスなどを探したりします。
私はMegamindのはじめの方でMetromanが赤ちゃんをジャグリングするショットを5ショット程アニメーションしましたが、当然そんな演技やリファレンスは無いので、ショットで求められている物を理解した上でジャグリングの基本のリファレンスを探し、浮遊しているメトロマンのビートに合わせてブロッキングをしていました。でも、当然、その場でボールをジャグリングするのと飛行しながら赤ちゃんをジャグリングするのとでは当然つじつまが合わない所が出てきます。そこは動きを解析しつつ想像を働かせるしかないですよね。後は見ていて気持ちの良い動きですね。
結局、私もみゆきさんがやっていることと同じ事をしていると思います。必ず想像力を働かせなければいけない所は出てきます。でも、実際の経験やリファレンスをもとにあり得ない動きを想像すれば、ウエイトなどリアルに見せることは出来ると思います。リアルよりリアリスティックが求めているものです。L.A.R.に頼りすぎるとポーズなどが小さくなったり、想像力が乏しくなるので気をつけましょう。
答えになっているか分かりませんが、少しは役に立ちそうかな。
では、頑張ってください

と、とても丁寧な回答で目からうろこという感じでした。

当時読んだ時も為になるなあと思いましたが、今読むと昔はわからなかった部分にもより頷けるような気がします(正直当時はそこまでActingに対する理解が深くなかったので、なんとなーくで理解していました。)

やっぱり、スキルと経験のあるアニメーターの言うことは、いつまでたっても色あせないものですね。Illusion of Lifeを読んでいると思いますが。いつ開いても発見があるというか。とはいえ、こういうのは知識だけで知っていてもダメなんですね、自分でガンガンアニメーションをしてくとその中でこういう言葉が響いてきます。本ばかり読んでてもだめですね「アニメーションは絵と一緒でやればやるほど上手くなります」(というのも、実は昔原島さんに言われた言葉ですが)

というわけでリファレンスのお話でした。



3 件のコメント:

  1. こんにちは、私は映画やアニメーションの世界に興味のある高校生です。
    私は来年の夏にピクサー社の見学に行きたく、ピクサー社の社員さんとコンタクトを取りたいのですが、なかなかコンタクトを取る方法がわかりません。
    原島さんとコンタクトを取られたのは昔のことだと仰ってましたので、今とは状況が全く違うと思いますが、もしよろしければピクサー社の方とコンタクトが取れる方法を知っていらしたら教えて下さるとありがたいです。
    拙い文章ですが、目を通して下さりありがとうございます。

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    1. こんにちは、始めまして。もしよろしければanimobake@gmail.com までメールを送っていただけますか?

      よろしくお願いします。

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  2. 返信が遅れて申し訳ありません。
    了解いたしました。

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